整形外科
「整形外科」というと、多くの方は怪我・外傷(骨折・脱臼など)を対象とする科であると考える方が多いと思います。実際に外傷対応は整形外科の基本であり大きな役割です。ただし、整形外科として扱う対象疾患は外傷以外にも、加齢に伴って骨・軟骨・靭帯・筋腱などが変形・障害されて、場合によってはその周囲の神経まで障害されて手足に痛みやしびれ・脱力や運動制限などが生じるものが多く存在します。
当院整形外科においては一般的な四肢の外傷と、股関節・膝関節・肩関節・肘関節を中心とした手足の様々な関節疾患、頚椎や胸椎・腰椎等の脊椎疾患が主な対象です。特徴としては、一般整形外科に加えてスポーツ整形外科及び人工関節センターを展開してそれぞれの専門治療を行っています。整形外科では多岐にわたる四肢外傷を扱っていますが、その中でスポーツに関連した外傷の一部や、スポーツ活動の負担により生じたスポーツ障害による症状をスポーツ整形外科で対応しています。また、手術適応となる股関節・膝関節疾患は人工関節センターが専門的に担当しています。
2024年11月には脊椎外科専門が赴任し脊椎疾患の手術治療を開始しました。神経障害を伴う頚椎や胸腰椎疾患にも積極的な手術治療(内視鏡手術やBKP・TLIF等の低侵襲手術も含む)が可能な整形外科として、診療の幅を広げています。また当院では治療後に残る機能障害を最小限にするため、リハビリテーション施設との連携を強化しており、安心して治療を受けていただくことができる体制が整っています。
スタッフ紹介
診療部長 |
有賀 健太(ありが けんた) 脊椎外科担当 |
---|---|
資 格 |
整形外科専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 |
整形外科部長代理 (リハビリテーション科科長 兼務) |
辻本 由美子(つじもと ゆみこ) |
---|---|
資 格 | 日本整形外科学会認定整形外科専門医 |
農野 啓正(のうの ひろまさ) | |
当院整形外科の取り扱う脊椎外科疾患
頚椎:
頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎症性神経根症、環軸椎不安定症、頚椎リウマチ病変いずれも頚椎の骨・軟骨・靭帯の変形等により、手足をコントロールしている神経が圧迫されて、手足のしびれ・運動障害(手が使いにくい~歩きにくいなど)・痛みが生じる疾患です。手足の症状にお困りではっきりとした診断がついていない方は是非整形外科を受診してください。
腰椎:
腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎変性すべり症、腰椎分離症~腰椎分離すべり症、腰椎骨折いずれも腰椎の骨・軟骨・靭帯の変形等により、下肢をコントロールしている神経が圧迫されて、足の痛み・しびれ・麻痺・歩行障害(歩くと痛みやしびれのために途中で休む必要が生じて長く歩けない間欠性跛行などが特徴的)が生じる疾患です。これらの足の症状にお困りではっきりとした診断がついていない方は是非整形外科を受診してください。腰の痛みが主症状であっても、病態によっては手術治療が必要な場合もあります。
胸椎:
胸椎症性脊髄症、胸椎椎間板ヘルニア、胸椎後縦靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症、神経症状を伴う胸椎骨折いずれも胸椎部分での骨・軟骨・靭帯の変形等により、下肢をコントロールしている神経が圧迫されて、下肢の痛みが出ることは少ないが足のしびれ・麻痺(力が入らない)・歩行障害(脱力により歩きにくい・不安定)が生じる疾患です。これらの足の症状にお困りではっきりとした診断がついていない方は是非整形外科を受診してください。
整形外科外傷の初期治療:RICE処置についてのおはなし
外傷を受傷され整形外科を受診されるまでの間にできることに関して
骨折・捻挫・打撲といった外傷は整形外科医による診察・治療が必要となります。 しかし夜間やスポーツ時の外傷の場合、整形外科医が不在の時があり、応急処置が必要になってきます。 その応急処置とは、安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)であり、これらの頭文字をとってRICE処置といいます。 RICE処置の意義は、急性期の炎症反応を抑制する、の一言に尽きます。急性期の炎症反応を抑制することにより、疼痛を軽減するのみならずその後の 修復を促進させ早期治癒につなげることが出来ます。 怪我などをした時に冷やしたり圧迫したりすることは経験的に誰しもがやっていることと思いますが、意外と間違った応急処置をしてしまっていることも 少なくありませんので、それぞれの項目について簡単に説明・補足したいと思います。
Rest(安静)
安静をとる事で患部への刺激を低下させ、さらなる損傷や外力を避けることにより炎症の沈静化を図ることを目的とします。 一般に副子固定などが用いられますが、包帯を巻く際は不適切な圧迫を加えず適度な力で必ず心臓より遠い方向から心臓に近い方向へ向かって巻くように注意しましょう。
Ice(冷却)
氷嚢もしくは保冷剤等で患部を冷却することで、内出血や腫脹の増大を防ぎ、炎症の沈静化を目的とします。冷却は一度行なえば良いというわけではなく、受傷直後の急性期では10〜15分冷却して、45〜50分休む、そしてまた冷却を、と繰り返し行います。そうすることで炎症を最小限に抑えることが出来ます。できるだけ 早期から冷却を開始しますが適用期間は24〜72時間であり、これを超えて漫然と冷却すると治癒機転を阻害する恐れがありますので注意が必要です。 凍傷を引き起こさないためにも冷却毎に必ず皮膚の状態を確認しておく事が大切です。また冷却の目的でコールドスプレーやシップを用いる人がいらっしゃいますが これは大きな誤解です。コールドスプレーやシップは表面のみの冷却効果しかなく、患部(深部)には冷却効果がありませんので注意が必要です。
Compression(圧迫)
弾性包帯などを用いて患部を圧迫することにより、拘縮や癒着の原因となる浮腫や出血を抑制することが目的です。前述の通り不適切な圧迫は 加えず心臓より遠い方向から心臓に近い方向へ向かって包帯を巻きましょう。
Elevation(挙上)
静脈の静水圧を下げ、血管から組織への体液の漏出を抑制し腫脹・浮腫を軽減させ、静脈還流を促進することが目的です。
RICE処置は、内出血や腫脹、疼痛を抑えるのに効果的であり、腫脹や疼痛が増悪するのを防ぐばかりでなく早期治癒につながります。『怪我をしてしまった際にはRICE処置』を覚えておいて頂けましたら幸甚に存じます。緊急な場面での冷静な対応を心がけてください。